MDM(Mobile Device Management)とは、企業のスマートフォンやタブレットなどのモバイル端末を一元管理するシステムのことです。
リモートからのデバイス監視や制御、セキュリティポリシーの適用などにより、テレワーク環境でも安全な情報管理を実現します。
しかし、導入するにあたっては、端末の利便性低下や準備に時間がかかるといった課題も存在するため注意が必要です。
この記事では、MDMの主な機能やメリット・デメリット、導入時の重要ポイントについて解説します。
目次
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MDMとは
MDMとは「Mobile Device Management(モバイルデバイス管理)」の略称で、企業や組織が所有するモバイル端末を一元管理するためのシステムのことです。
テレワークやリモートワークの普及に伴い、業務用モバイル端末の活用が急速に広がる中、セキュリティリスクの管理や業務効率の向上を実現する重要なツールとして注目されています。
MDMを導入することで、IT管理者は遠隔地からでも全てのモバイル端末の状態を把握できるようになります。
また、セキュリティポリシーの適用やソフトウェアの配布、紛失時のデータ保護などを効率的に行うことも可能です。
「持ち込み端末の業務利用(BYOD:Bring Your Own Device)」の増加や、テレワーク環境での情報漏洩リスク対策として、MDMの重要性はますます高まっています。
MDMの主な機能
MDMは多岐にわたるセキュリティ機能と管理機能を備えており、企業のニーズに応じた活用が可能です。ここでは、MDMの主な機能を5つ紹介します。
モバイル端末の状況把握
MDMの基本機能として、組織内で利用されている全てのモバイル端末の状態をリアルタイムに可視化することが挙げられます。
具体的には、OSのバージョンやインストールされているアプリケーション、端末の位置情報などを一覧で把握できます。
さらに、端末の閲覧履歴やログの収集、ストレージの使用状況なども確認できるため、リモートワーク中でも端末のパフォーマンス低下を予防できるのです。
テレワーク環境では端末の物理的な確認が難しいため、この可視化機能は重要な役割を果たします。
モバイル端末の一元管理
MDMでは複数のモバイル端末に対して、一括で設定やポリシーの適用が可能です。
テレワーク導入時のような大規模な環境変更が必要な場合でも、各端末を個別に設定する手間を大幅に削減できます。
例えば、Wi-FiやVPN設定、メールアカウントの構成などを一度に展開でき、設定ミスによるトラブルも防止できるでしょう。
また、アプリのライセンス管理も効率化され、ソフトウェア資産の適切な管理も実現します。
セキュリティ管理
MDMのセキュリティ管理機能は、リモートワーク環境における情報保護の要となります。
具体的には、以下のようなセキュリティ管理が実現します。
▼MDMの主なセキュリティ管理機能
- パスワードポリシーの強制
- スクリーンロックの設定
- ゲームアプリの制限
- スクリーンショットの防止
- カメラ機能の無効化
基本的なセキュリティ対策を徹底できるため、社外での端末利用が増えるテレワーク環境でも一定のセキュリティレベルを維持できます。
特に重要なのは、企業データへのアクセス制限機能です。
許可されたアプリだけが社内データにアクセスできるよう設定することで、テレワーク中のデータ漏洩リスクを大幅に低減できます。
リモート制御
MDMのリモート制御機能はテレワーク環境で特に重要な役割を果たします。
紛失・盗難時に遠隔から端末をロックしたり、データを消去したりする機能により、社外で使用される端末の情報セキュリティを強化できます。
万が一、従業員が端末を紛失した場合でも、IT管理者が即座に遠隔操作でデータを保護できるため、情報漏洩のリスクを最小限に抑えられるのです。
データ・ファイルの暗号化
MDMにはデータ・ファイルの暗号化機能も含まれています。
重要なデータやファイルが入ったモバイル端末を社外に持ち出す際に、自動的に暗号化することで、不正アクセスからデータを保護します。
また、公衆Wi-Fiなど安全性が確保されていないネットワークを使用する場合でも、データが暗号化されていれば第三者による傍受や盗聴のリスクを回避できるのです。
MDMを組織に導入するメリット
MDM導入により、組織のモバイルセキュリティと管理効率が大幅に向上します。
特にリモートワークやテレワーク、BYOD環境が増える中、企業のIT管理者にとって重要な支援ツールとなっています。
紛失・盗難が起きた際の情報漏洩リスクを減らせる
モバイル端末の紛失や盗難は、テレワーク環境では特に深刻なセキュリティリスクとなります。
MDMを導入することで、端末の紛失や盗難発生時に、遠隔からデータ消去やロックを即座に実行できるため、情報漏洩リスクを最小限に抑えられます。
社外で業務を行うリモートワーカーの端末が紛失した場合でも、迅速な対応によりデータ保護が可能です。
また、位置情報の追跡機能により、紛失した端末の発見確率を高めることもできます。
モバイル端末の業務外利用を防止できる
テレワーク環境では、業務用端末の私的利用が増加する傾向にあります。
他の人に見られないからといって、従業員が業務用端末でYouTubeやSNSを開いているなんてこともあるでしょう。
その点、MDMを活用すれば、業務に不要なアプリケーションのインストールや利用時間の制限により、業務外利用を効果的に抑制できます。
カメラやUSB接続などの機能を選択的に無効化することで、意図しないデータ流出や私的利用を防止できる点も大きなメリットです。
モバイル端末の管理を効率化できる
MDMの一元管理システムにより、数百・数千台規模の端末でも効率的な運用管理が可能になります。
大規模なリモートワーク体制を敷いている企業でも、少人数のIT部門で全社的な端末管理が実現できるのです。
例えば、新しい業務アプリの一斉配布やセキュリティアップデートの適用を、各端末を個別に操作することなく実行できるため、テレワーク環境でも迅速な対応が可能となります。
また、端末の利用状況や問題点を可視化するレポート機能により、効率的な資産管理や予防的なメンテナンスも実現します。
MDMを組織に導入する際の注意点
MDM導入には多くのメリットがある一方で、いくつかの課題やデメリットも存在します。
特にテレワーク環境で導入を検討する際は、以下のような潜在的な問題点を理解し、適切な対策を検討することが重要です。
モバイル端末の利便性が損なわれる可能性がある
MDMによるセキュリティ強化は、時として端末の使い勝手を犠牲にすることがあります。
ソフトウェアの利用制限やアプリのインストール制限が厳しすぎると、リモートワーク中の業務効率が低下する可能性があるのです。
例えば、特定のアプリやWebサイトへのアクセス制限が業務に必要なサービスまで遮断してしまうケースがあります。
従業員の生産性低下やフラストレーションに繋がるリスクもあります。
このため、セキュリティ対策と利便性のバランスを慎重に検討し、業務に必要な柔軟性を確保しながらセキュリティレベルを適切に設定することが重要です。
実現までに手間と時間がかかる
MDMシステムの導入は即効性のある対策ではありません。
選定から設定、展開、運用まで一連のプロセスには時間と労力を要するため、テレワーク移行を急いでいる企業にとっては障壁となる可能性があります。
特に大規模な組織では、端末の登録や初期設定、ポリシーの作成など、準備段階で多くの工数が必要です。
組織規模や管理端末数によっては、導入コストや運用負担が予想以上に大きくなる可能性もあります。
また、既存のIT環境との統合作業や従業員への教育・周知にも時間がかかるでしょう。
MDM製品を導入する際の重要ポイント
多様なMDM製品の中から自社に適したソリューションを選定するには、複数の観点から比較検討を行うことが大切です。
ここでは、MDM製品を導入する際の重要ポイントを3つ紹介します。
サービス形態
MDMのサービス形態には、オンプレミス型とクラウド型の2種類があり、それぞれに特徴があります。
オンプレミス型は社内でのカスタマイズ性が高く、セキュリティポリシーや運用ルールを細かく設定できるメリットがあります。
社内のシステムとの連携が容易で、機密性の高いデータを扱う企業に適していますが、導入・運用コストが高く、テレワークによる分散環境での管理が複雑になる点には注意が必要です。
一方、クラウド型は迅速な導入と低い初期コストのメリットがあり、テレワーク環境との親和性が高いといえます。
インターネット経由で管理できるため、管理者自身がリモートワークをしている場合でも運用がしやすく、システムの拡張性にも優れています。
自社のIT環境や運用体制に合わせて、最適なサービス形態を選択しましょう。
機能の充実度
MDM製品を選ぶ際は、基本的なデバイス管理機能だけでなく、アプリ管理やコンテンツ管理など必要な機能が網羅されているかを確認することが重要です。
テレワーク環境に必要な機能としては、主に以下のようなものが挙げられます。
▼テレワーク環境に必要なMDMの機能
- リモートワイプ
- 位置情報追跡
- アプリケーション管理
- コンテンツ配信
- VPN設定
特に重要なのは、社内システムとの連携機能やシングルサインオン対応など、リモートアクセスを効率化する機能です。
将来的な拡張性も考慮し、EMM(モバイル端末の総合管理システム)への発展可能性や他システムとの連携機能も重要な選定基準となります。
マルチOS・マルチデバイス
テレワーク環境では、多種多様な端末が業務に利用されるケースが増えています。
iOS、Android、Windowsなど複数のOSに対応しており、組織内の多様な端末を一元管理できることが理想的です。
特にBYOD環境では、個人所有のさまざまな端末を管理する必要があるため、幅広いデバイス対応は必須条件といえるでしょう。
スマートフォンやタブレットだけでなく、PCやIoTデバイスなど管理対象範囲の広さも検討すべきポイントの1つです。
「GMOグローバルサイン」のマネージドPKI Lite byGMO
画像引用元:GMOグローバルサイン
「GMOグローバルサイン」が提供するマネージドPKI Lite byGMOは、モバイル端末のセキュリティ強化と業務効率向上を両立させるソリューションです。
このサービスは、MDMとの連携により、クライアント証明書による強固な認証とモバイル端末の一元管理を実現します。
マネージドPKI Lite byGMOの特徴は、ID・パスワード認証の代わりにクライアント証明書を利用することで、セキュリティを向上させながらも利便性を高められることです。
テレワークやリモートワークでの業務にも適しており、MDMとの連携により証明書の配布・管理も効率化できます。
まとめ
この記事では、MDMの基本概念から主な機能、導入のメリット・デメリット、製品選定のポイントまで解説しました。
MDMは、テレワークやリモートワークの普及に伴い、企業のモバイル端末管理における中心的な役割を担うようになりました。
モバイル端末の状況把握や一元管理、セキュリティ強化、リモート制御、データ暗号化などの機能を通じて、情報漏洩リスクの低減や業務効率の向上に大きく貢献します。
サービス導入にあたっては、自社のニーズに適したサービス形態や機能を持つ製品を選定することが重要です。
「GMOグローバルサイン」では、マネージドPKI Lite byGMOを提供しています。強固なセキュリティと業務効率向上の実現を目指せます。
文責:GMOインターネットグループ株式会社