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社内レポート

2012年3月14日(水)

企業・業界の真髄を見抜く

インフォグラフィックスな企業分析で市場・経営を読み解く

今回からスタートするGMO最新ネット業界レポートの新シリーズ「企業分析編」。第1回目は本シリーズ執筆者であるGMOインターネット株式会社グループ財務部 丸山敦士氏の経歴や、今後の企業分析レポート執筆にかける思いを語っていただいた。

同氏は、株式会社シェアーズで企業分析の中核メンバーとして活躍し、企業業績や財務状況を直観的に判断できるビジュアライズレポートをシェアーズブログ等で発表、個人投資家を中心に高い評価を受けている新進気鋭のアナリストである。現在はGMOインターネット株式会社へ異動し、企業・業界分析を一手に担っている丸山氏ならではの、独自の視点によるレポートに期待したい。

記事INDEX

『金融の民主化』をめざして

私が企業分析を行うようになったのは、銘柄分析システムの開発・運営や法人顧問・コンサルティングを行うことを目的として設立されたブルー・マーリン・パートナーズ有限会社(現/株式会社シェアーズ)へ入社した2006年のことです。
当時は外資系ファンドによるM&Aで日本企業が資産を買い叩かれていた時代だったため、「日本人のファイナンスの資質を高めていかないと」という危機感を持っていました。そんななか、『金融の民主化』という理念を掲げる同社の考えに賛同し、この業界へと飛び込みました。

入社後は、投資分析やアナリストレポート、ランキング、分析フレームワークの企画・制作、コラム執筆等を担当。シェアーズブログで企業・業界分析レポート等も随時発表し、ウォッチしていた企業・セクターは、あらゆる分野に及びました。

個人投資家向けのアナリストレポートを執筆

個人投資家の興味は、やはり株価にあります。しかし、株価はあくまで市場からの評価であり、"結果"に過ぎません。
大事なのは、株価を上下させる業績、さらには業績を生み出す"原因"である事業がどうなっているのか? そしてどう変化するのか? その構造を洞察することです。
そのための情報をIRセクションは豊富に持っています。投資家自身が企業の成長性や収益性の仮説を構築したうえで質問をすれば、IRセクションの持っている企業内情報を効率良く聞き出すことができ、自身の仮説を検証することができます。なぜ株価が低いのかと聞いているようではだめなのです。そんなことIRセクションの人に聞かれても答えようがありません。
2006年頃は、こういった上場企業のIRセクションに対する質問の仕方についてなど、個人投資家向けの情報を執筆していました。

また、「これを買えば儲かる」といった"答え"を伝えることはあまりしていませんでした。
むしろ、自分の投資スタイルに合わせて、本来の企業の実力に対して安い株価がついている銘柄(割安と感じた銘柄)に投資をする『バリュー(割安株)投資』を勧めていたため、企業の実態に迫るための"手法"を積極的に配信していました。
その方が、再現性もあり、「日本人のファイナンスの資質を高める」ことにも繋がると思ったからです。

4象限マトリクス分析による企業分析

私が、企業分析でよく使う手法の1つに4象限マトリクス分析があります。
これは、分析軸を設定し、その分析軸で企業をプロットしていく手法です。シェアーズ入社後、この4象限マトリクス分析で成果を上げた1つに、マンションデベロッパーや不動産銘柄に対する分析があります。これは、金融市場に大量のマネーが滞留し株価が順調に上がっていた時期から一端調整のために価格が下がった時に、今後、各銘柄がどうなるかを予測したレポートでした。
この時の分析軸には、収益性(粗利益率等)と財務安定性(DEレシオや短期流動性等)を採用しました。

財務安定性があって粗利益率も高いと株価回復の可能性は高く評価できますが、財務安定性がなくて、粗利益率も低い企業は、その後淘汰されていくと予測しました。勿論、これは業界的な総論に過ぎませんので、個別銘柄の分析に当たっては、事業内容や投資先の不動産の状況とかをチェックすることも行います。
また、不動産セクターであっても、その事業割合が低い企業(不動産販売ではなく仲介ビジネスを主にしている等)では、株価が押し下げられる要因はありません。そういった銘柄を見つけ出して、個人投資家に株価リバウンドの可能性が高い銘柄として情報提供もしていました。このような視点のトリガーとなるのが、4象限マトリクス分析なのです。

4象限マトリクス分析に使用する分析軸、いわゆる「物差し」は、成長性とか安定性とか一般論では何%あれば大丈夫というものがあるのですが、企業には個別性があります。そのため、個々の企業の実態に即した物差しを開発することが必要です。
企業分析のための道具、一般的な物差しは揃っていますが、どれを使うか、どのように組み合わせるかはアナリストによる職人技ということなのです。

フォーマット化された財務分析からは、有益な情報は抽出できない

インターネット業界は財務データだけでは分からない側面が非常に多いため、会員数の推移や客単価、年齢層といった事業と業績を創り出す元となる数字をマージさせて分析することで、いろいろな面が見えてきます。

シェアーズブログで一番ヒットしたのが、大手SNSサイトを運営する2社ののARPU(Average Revenue Per User)を比較したレポートでした。ARPUがどのように推移しているかということと、その背景にはどのような出来事があったかということを、時系列で1枚のグラフにしたものです。
これは、インフォグラフィックスという最近注目されている手法で、情報、データ、知識を視覚的に表現したものです。概念的情報を分かりやすく表現するツールとしてよく用いられます。元の数字自体は会社が公表しているものですが、それを組み替えて表にしてみることで、ソーシャル業界の縮図から、今後の方向性や課題点があぶり出されるわけです。

さらに、IT業界各社を創業から上場までの期間と上場した時の各社代表の年齢でセグメントしたレポートも大変好評でした。
実はこの分析は、ある漫画週刊誌の各作品がいつ始まり、どれだけ続いているかということをプロットしたものをWebで見かけ、「これを企業でやってみたらどうだろうか」と思いつきプロットしたものです。このように、切り口を変えるだけで、新たな世界が見えてくるのです。

ユニークな分析軸・企業分析のヒントは日常生活の中に溢れている

私の分析軸や企業分析のヒントは、割と日常生活の中で皆さんの目にも触れている情報が大半を占めています。

今後の本レポートの中では、各業界の企業業績がどのようにマーケットから評価されているのか、各社の戦略と業績とのマッチング等を、様々なユニークな物差しを開発して、分かりやすく読み解いていけるものをめざしていきます。私の役割は、公表されている財務情報を、分かりやすく新たな視点や世界を加えて翻訳していくことだと思っています。

今の企業はソーシャル化が進んできており、社会全体では"個人"がクローズアップされています。
さはさりながら、"企業"との関わりが大きいのが現実ではないでしょうか?企業と個人との関わり合いを会計という言語をベースにして読み解くことによって、単純に何パーセント増益とかという数字だけではなくて、皆さんにとって分かりやすく、より身近に感じられるような表現で情報を発信していきたいと考えています。




本レポートは、企業業績や財務状況を直観的に判断できるビジュアライズレポートが個人投資家を中心に高い評価を受けている当社グループ広報・IR部の丸山(元、銘柄分析サービスの(株)シェアーズ アナリスト)が、独自の視点で企業・業界分析しているレポートです。


2012.02.28



*本文中に記載されている会社名および商品名・サービス名は、各社の商標 または登録商標です。