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社内レポート

2014年7月16日(水)

IT大手企業の設備投資・M&A投資の総括

Apple・Google・Facebook・Amazonの4社を比較

FacebookによるWhatsApp買収、GoogleによるNest買収など大手ネット企業によるM&A案件が相次いでいます。さらにこれまでM&Aにはあまり積極的でないと思われてきたAppleもBeats買収を発表するなど、M&Aを積極化させています。

企業による投資は、大きく2つに分けることができます。まず、M&Aといういわば他力・非連続的な投資。そして、設備投資という自力・連続的な投資です。

他力と自力、非連続と連続、両者を合わせて見ることで、それぞれの企業の目指す方向性が見えてくるはずです。ということで、大手ネット企業Apple・Google・Facebook・Amazonがどこにお金を使っているのか?その投資額・M&A関連の支出を見ていくことにしましょう。

記事INDEX

グラフの見方、注意点

まずは、グラフの見方と注意点をいくつかご案内します。赤が設備投資、青がM&Aへの支出額を示しています。数字の出所は各社の決算書からとなり、2014年3月末までのものとなっています。ですので、直近の動き(FacebookによるWhatsAppの買収、AppleによるBeatsの買収)をグラフ上は取り込めていません。

また、数字はあくまで支出「額」だということに注意してください。FacebookによるWhats App買収の事例でいうと、買収価額は190億ドル(1兆9,000億円)なのですが、全額をキャッシュで支払うわけではありません。今回のグラフで示しているのは、このうちキャッシュによる支出「額」40億ドル(4,000億円)分となります。では、残りの金額は?というと、Facebookの株式を渡しています。Facebookは資本市場からの高い評価をうまく使っているといえます。

最後に、グラフの単位は100万ドルです。1ドル100円で換算すると、100万ドル=1億円なので、グラフの数字はそのまま億円と読み替えることができます。それでは各社の順番に見ていくことにしましょう。

Apple

設備投資の額は右肩上がりを続け、2012年2Qに急増、2012年3Qにピークをむかえています。2012年3Qといえば、iPhone5の発売があった四半期(2012年9月)です。設備投資の急増は新製品発売フラグとみなすことができるかもしれません。

翻って足元の設備投資の状況をみると、低下傾向にあることがわかります。「iPhone6の発表はいつか?」は常に話題になるところですが、その意味では、2014年2Qでどれだけ設備投資を行なっているか、要チェックといえそうです。

減少傾向にある設備投資と対照的に、近年M&Aに積極的になっています。2013年4Qには、Twitter分析の「Topsy」、3Dセンサーの「PrimeSense」にあわせて5億ドル(500億円)を、そして、グラフの範囲外である2014年5月にはヘッドフォンとストリーミングサービスの「Beats」に26億ドル(2,600億円)を支出しています。自力での成長にこだわらず、M&Aも活用するという大きな転換点にあるといえるでしょう。

(参考)Apple、Beats MusicとBeats Electronicsを買収

iPhone、iPadなど強力な製品を抱えるAppleは、有り余るキャッシュを抱えています。その使い道として、株主からは2つの異なる声があがっていました。まずは、M&Aなど投資の促進、そして株主還元の強化です。株主還元については、自社株買い・配当など手は打たれていたものの、M&Aに関してはこれまでなかなか進んでいないというのが現状でした。足元のM&Aの増加が意味するのが、たんに株主からの要請に答えるものなのか、それとも自力での成長に限界を感じてのものなのか……。有り余るキャッシュを考えても、今後もさらなるM&A案件の発表もありそうです。

Google

2012年2Qのモトローラへの買収が100億ドル(1兆円)を超え、突出していることがわかります。また、2014年1Qにはスマートホームの「Nest」に30億ドル(3,000億円)近くを、2014年6月には監視カメラの「Dropcam」に5億ドル(500億円)を支出。もともと内部成長にこだわらず、M&Aに積極的だったGoogleですが、その傾向は変わらないようです。

加えて、注目すべきは自力での成長といえる設備投資を増加させていることでしょう。四半期あたり10億ドル(1,000億円)前後で推移していた設備投資の額ですが、足元は3四半期連続して20億ドル(2,000億円)を超えて推移しています。この点、資産の内訳を見ると、建設中(Construction in progress)の項目が56億ドル(5,600億円)と、前年同期に比べ33億ドル(3,300億円)以上も多くも積まれており、新たなプロジェクトの進行を予感させます(2013年4Q末時点)。

他の3社と比較しても、最も積極投資モードなのがGoogleといえそうです。

Facebook

Facebookは上場前からM&Aに積極的で、画像共有「Instagram」などを傘下に収めてきました。その極めつけが、WhatsAppです(グラフの範囲外ではありますが……)。2014年1Qまでのグラフの上限が10億ドル(1,000億円)ほどですから、総額190億ドル(1.9兆円)、現金支出40億ドル(4,000億円)という数字の突出具合がわかります。

個人的に気になるのは、設備投資の少なさです。確かに、金額自体は増えているものの、Facebookの事業自体が急拡大していることを考えれば相対的に低水準といえるでしょう。サーバーなどインフラ設備を自力で持つことにこだわっていないのかもしれません。

Amazon

Amazonは他のネット企業と異なり、物流センターという物理的拠点を抱えています。直近の一番大きなM&Aは2012年2Qにおける倉庫ロボット「Kiva Systems」の買収でした。その後、設備投資の水準が切り上がっていることから、非連続的な成長をうまく取り込み、成長を加速させていることがうかがえます。

まとめ

自力での連続的な成長か、それともM&Aによる非連続的な成長か。そのスタンスにはそれぞれの企業文化が現れます。

金額的インパクトの大きさもあり、話題に上りがちなのは、やはりM&A関連のニュースでしょう。それに比べれば、設備投資の金額などは財務諸表の片隅にひっそり書かれる地味な数字の羅列に見えてしまうかもしれません。しかし、ネット企業が事業を拡大するには、サーバーなどのインフラ投資は欠かせません。むしろ、新しいビジネスの胎動は設備投資にあるといっても過言ではないはずです。

Google、Amazon、Appleがどれだけの投資を行なっていくのか?その動向に注目しています。





本レポートは、企業業績や財務状況を直観的に判断できるビジュアライズレポートが個人投資家を中心に高い評価を受けている当社グループ広報・IR部の丸山(元、銘柄分析サービスの(株)シェアーズ アナリスト)が、独自の視点で企業・業界分析しているレポートです。


2014.7.1



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