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社内レポート

技術ブログ

2014年3月26日(水)

ブランデッド・コミュニティ×スーパープロモーター Vol.2

事例紹介とオンラインにおけるスーパープロモーターの抽出条件

近年、盛んになっている価値共創型マーケティングを成功させるうえで必要な考え方や手法を紹介する「ブランデッド・コミュニティ×スーパープロモーター」シリーズ。
第2回は、スーパープロモーターの概念について再度確認したうえで、海外における導入事例紹介やオンラインにおけるスーパープロモーターの抽出条件についてレポートいたします。

記事INDEX

スーパープロモーターの概念

近年、企業(ブランド)がインターネット上に常設する「ブランデッド・コミュニティ」が盛んに行われるようになっています。その背景には、製品志向のマス・マーケティングに代わって顧客志向マーケティングの考え方が注目されるようになるなか、企業と顧客との相互作用により、価値を共創する「価値共創型マーケティング」が普及してきたことがあります。

2007~8年頃、リサーチやプロモーションを目的に米国で開発されたブランデッド・コミュニティは、現在、顧客参加型の商品開発、顧客によるコンテンツ作成、顧客サポートなど、企業と顧客との価値共創が幅広く行われており、まさにスーパープロモーターの活躍する舞台だと言えます。


■スーパープロモーターとは
スーパープロモーターとは、オランダの"The Superpromoter Academy"が提唱している概念です。

■スーパープロモーターとオピニオンリーダーは異なる概念
スーパープロモーターとは、ブランドや製品に対して格別な思い入れを持ったファンであり、それについての情報を周囲にシェアし、シェアされた側がそのブランドや製品を使用し始めるほど影響力のある人たちのことを指します。このスーパープロモーターと類似した概念に、オピニオンリーダーがあります。ただし、特定のブランドや製品に対して格別な思い入れを持ち、周囲に自分の意見を主張して影響を与えることができるスーパープロモーターに対して、影響力が単に大きいだけで特定のブランドや商品に思い入れを持っていない場合もあるオピニオンリーダーは、異なる概念だと言えます。


■スーパープロモーターとロイヤルユーザー(※1)の関係について
特定のブランドを継続的に購入するロイヤルユーザーは、そのブランドの熱心なファンであることには変わりませんが、スーパープロモーターと違って、周囲の人々に熱心に勧めることに興味がないユーザーも存在します。もちろん両方の性質を持った人々もいますが、それぞれは異なる概念であると言えます。

スーパープロモーターの概念について紹介しているRijn Vogelaar の著書"The Superpromoter : The Power of Enthusiasm"では、ロイヤルティ(※2)を以下のように5つに分類し、スーパープロモーターが存在する確率が際立って高いセグメントをNormative Loyalty(規範的ロイヤルティ)とAffective Loyalty(感情的ロイヤルティ)の2つだとしています。

表1 ロイヤルティの定義と種類
表1 ロイヤルティの定義と種類
スーパープロモーターの事例

次に、「価値共創型マーケティング」の源泉であるブランデッド・コミュニティでの活躍が期待されるスーパープロモーターがどのようにして生まれるか、また、企業はスーパープロモーターをどのように活用しているかについて、日本および海外の事例を紹介します。


■事例1:株式会社オリエンタルランド(東京ディズニーリゾートの運営会社)
東京ディズニーリゾートは、約2,750万人(2012年度)が訪れる日本最大のテーマパークですが、来園者の9割がリピーターと言われています。ディズニーリゾートではキャスト(スタッフ)とゲスト(顧客)がパークそのものをステージに見立て、その中でそれぞれの役割を演じるというコンセプトを持っており、顧客に対する各スタッフの真心からのコミュニケーションが大きな共感を呼んでいます。

結果、来園者が自らの感動した体験を周囲に伝えることで、ディズニーリゾートのスーパープロモーターとなり、噂を伝え聞いた人が来園することでスーパープロモーターが増え、さらには友人同士や家族で来園してその輪が広がっていくという好循環を生み出し続けています。1983年の開園から30年以上が経過し、親子3代にわたってディズニーリゾートの大ファンという家庭も少なくありません。

■事例2:レゴ社(デンマークの玩具メーカー)
デンマークのレゴ社が1998年に発売したマイクロ・コンピュータ搭載のロボット組み立てキット「レゴ マインドストーム」は、ユーザーとの価値共創をいち早く実践し、成功している玩具です。レゴ マインドストームは、もともと教育用ロボット教材として開発されましたが、発売後間もなく、ハッカーによってソフトウェアのプログラムコードをネット上に公開され、さまざまなロボットが生み出されていきました。このような状況下でありながら、レゴ社はソフトウェアの改良を積極的に支援する体制を築くことを決断し、プログラムをオープンソース化。

このことにより、多くの愛好家たちはネット上で自分の開発した製品を盛んに公開したり、情報交換したりするようになってファンは増加し、スーパープロモーターもどんどん生まれていきました。新製品開発、イノベーションがオンライン・コミュニティ上でうまく機能した事例だと言えます。

■事例3:フィリップス・インド社(オランダの電機メーカーのインド現地法人)
・背景
フィリップス社は、オランダに本社を持ち、コーヒーメーカーやシェーバーなどで有名な電機・家電総合メーカーです。これまで製品の総合的な品質管理の取り組みは大きな成功を収めていたため、一見問題は発生していないように見えましたが、問題点をより的確に検知し、顧客との接点の持ち方を改善したいという想いを持っていました。

・目的
フィリップス社は問題点の解決を重視していたため、満足度が高い熱心な顧客にはあまり着目してきませんでした。しかし、スーパープロモーターは社内で気付かれない多くのインサイトを有しているため、顕在化していない問題を多く把握している可能性があります。彼らと接触し、彼らの活動をサポートする体制を築くことは、顧客との接点の持ち方を改善するのに大変有効であると考えました。そこで、インドにおけるフィリップス製品のスーパープロモーターを識別し、理解したうえで、彼らの活動を支援するためのプロジェクトに取り組みました。

※スーパープロモーターの支援プロジェクト自体、通常の企業における旧来のマーケティングプロセスとは異なるため、経営陣の深いコンセプト理解が不可欠です。フィリップスにおいては、マーケティング最高責任者の理解を得て、深い信頼のもとにプロジェクトを進めました。

・調査を通じて発見されたインサイト
表2に示されるインサイトから、スーパープロモーターたちはフィリップスが特に何のサポートをしなくても、その製品を深く愛するがゆえに自発的に周囲の人々にシェアし、実際に製品を贈っていることがわかりました。そこで、フィリップス社では一方的なプロモーション活動を行わずに製品の素晴らしさを広めてくれるスーパープロモーターがもっと動きやすいようなサポート体制を整えることこそ、最も有効な顧客経験の改善につながると考えました。また、スーパープロモーターの存在を知ったフィリップス社の経営陣はその熱意に心を打たれ、全社員にも彼らの活動を共有し、自社への誇りを感じてもらえるようにしました。

表2 フィリップス社がスーパープロモーターより得られたインサイト
表2 フィリップス社がスーパープロモーターより得られたインサイト
ブランデッド・コミュニティで活躍するスーパープロモーターの条件とは?

これまでの事例からわかるように、特定の製品・ブランドのスーパープロモーターは、製品やブランドに格別の思い入れを持ち、自ら進んでその熱意を周囲にシェアしてくれます。そのため、彼らを動きやすくしたり、自分たちの活動に誇りを持てるようにサポートしたりしてあげることは、企業に対して大きなメリットをもたらします。

それでは、定量アンケート調査を活用して、スーパープロモーターを発見するには、どのような設問を投げかければよいのでしょうか?


■NPS(ネット・プロモーター・スコア)
スーパープロモーターの定義(図1)に立ち戻ると、「ある製品・ブランドについて、周囲にシェアしたいほど格別な思い入れがあるか」を必ずクリアする必要があります。このために、Rijn Vogelaarの著書"The Superpromoter : The Power of Enthusiasm "では、NPS(ネット・プロモーター・スコア)(※3)を提案しています。

NPSは現在世界中のメーカー、調査会社でロイヤルティ計測における「究極の質問」として広く利用されている調査手法です。「あなたがこの製品(ブランド・企業・・・)を友人や同僚に薦める可能性はどれくらいありますか?」(※4)という問いに対する回答を以下のように0~10の11段階で評価・分類しています。

・「推奨者(Promoter)」(10~9)
・「推奨も批判もしない中立者(Passive)」(8~7)
・「批判者(Detractor)」(6以下)

これらをもとに、全体に占める推奨者割合から批判者割合を引いた数値がNPS指標と呼ばれています。Rijn Vogelaar は、以前からNPS指標をスーパープロモーターの抽出に使用していましたが、単に「推奨者(Promoter)」(10~9)であればスーパープロモーターの条件を満たしていると著書内で述べています。GMOリサーチもその考えを基本的に踏襲しています。

(※3)NPSはロイヤルティに基づくマーケティングの創始者とされているFrederick Reichheld [フレデリック・ライクヘルド](1952~)が提唱。彼が名誉ディレクターを務めていた米国のコンサルティング会社ベイン・アンド・カンパニーを通じて広まりました。2006年の著書 " The Ultimate Question : Driving Good Profits and True Growth " で、ロイヤルティを導き出す究極の質問として紹介されています。
(※4)NPSは「周囲に対するシェアの可能性」を尋ねているが、" The Superpromoter : The Power of Enthusiasm " では、スーパープロモーターの思い入れの深さを測定するための指標としています。


■スーパープロモーターのその他の条件
スーパープロモーターの定義(図1)に沿って、" The Superpromoter : The Power of Enthusiasm " は上記のNPS以外に「特定の製品・ブランドを実際に周囲にシェアしているか」「シェアされた人が実際に購入しているか」の2点をクリアする必要があるとしています。これらの点に若干のローカライズを行い、GMOリサーチは以下のような設問構成を提案します。


■ブランデッド・コミュニティで活躍してもらうための条件
スーパープロモーターに、オンラインのブランデッド・コミュニティ内で自分の熱意を活発にシェアしてもらうためには、オンラインでのコミュニケーションに対する一定の馴れが必要であると考えられます。これについて、GMOリサーチはネットサービスやソーシャルメディアの利用実態から測れるものと想定しています。

ブランデッド・コミュニティで活躍するスーパープロモーター選定の設問構成案

上記の条件をまとめたGMOリサーチの提案する「スーパープロモーター選定の設問構成案」は以下のようになります。下記の設問構成をもとに、いくつかのテーマについてスーパープロモーターを特定する自主調査を実施し、その内容についても本レポートで報告したいと思います。

表3 GMOリサーチの提案する設問項目構成案
表3 GMOリサーチの提案する設問項目構成案

次回は、スーパープロモーターの選定方法についてより詳しく解説します。



「ブランデッド・コミュニティ」についての詳細問合せは以下まで。
GMOリサーチ株式会社 JMI事業本部 担当山本
Tel.03-5784-1100
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