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社内レポート

技術ブログ

2013年3月6日(水)

調査票のいらない調査「Scanamind(スキャナマインド)」Vol.2

事例からみる調査の流れ、アウトプットデータの見方・活用について

リサーチャーの想定範囲を超えるインサイトを引き出すことを目的にした、調査票のいらない調査「Scanamind(スキャナマインド)」シリーズ。

第2回は事例をもとにした調査の具体的な流れやアウトプットデータの見方・活用についてレポートいたします。

記事INDEX

はじめに

今回は、Scanamindを使った調査の事例をもとに、調査の流れやアウトプットデータの見方・活用について解説していきます。その事例とは、「自動車に対する消費者のイメージ構造の可視化(マッピング)」を目的に、自動車のブランドや車種に対するイメージを収集・分析し、どのようなマッピングデータを作成できるかについて取り組んだ自主調査です。

通常の調査では、仮説や枠組みを設定して調査票を作り、回答者のために「車種名リスト」や「形容詞リスト」などを用意します。しかし、Scanamindの場合はこれらの準備作業が不要となっているので、バイアスがかからない調査になっているといえます。

調査事例の設計概要

◆株式会社クリエイティブ・ブレインズ自主調査◆

[1]目的:自動車に対する消費者のイメージ構造の可視化(マッピング)

[2]調査時期:2012年8月21~22日

[3]調査対象:GMOリサーチ保有オンラインパネルinfoQ(日本国内 男女18~69歳)

[4]有効回答数:2,059件(*1)

[5]調査方法:以下の「調査の流れ」を参照


*1こうした定量調査における必要サンプル数の目安は最低1,000件だといわれています。今回は約2,000件あるため、十分に信頼性の高い結果が得られているといえます。

調査の流れ

【1】12項目の言葉を挙げてもらう
まず、分析の基礎となる自動車に関する12項目の言葉を調査対象者に挙げてもらいます。いきなり「思い浮かぶイメージを12個挙げてください」と言われても、なかなか出てこないものですが、Scanamindでは具体的な話題を提示し、イメージを広げてもらってから抽象的な作業に移るなど、調査対象者の項目を引き出しやすくする手法を採用しています。

【2】12項目の言葉の関連性を評価
[エコ ハイブリッド車]のように、これまでリストアップしてもらった12項目の言葉を一対にした全66通りの組み合わせについて、それぞれ関連性があるかないか4段階で評価してもらいます。

アウトプットデータの見方

【1】基本的なとらえ方[1]
多数の調査対象者が自由に回答すると、とりとめのない状況になって、傾向が見出しにくくなると思われるかもしれませんが、実際は同じ言葉が多く列挙されるようです。今回の総列挙数8787項目のうち、上位2つは全回答者中の約2割から列挙されるなど、ごく少数の言葉に回答が集中しながらも、調査対象者によっては挙げる言葉が違っているという結果になりました。

この8787個という項目は、1人のリサーチャーの仮説や枠組みのもとで導き出すよりも、相当バリエーションの幅が広いですし、もちろんリサーチャーが思いつくことはここにも挙がっているはずです。そのため、調査票のいらない調査が「Scanamind」により可能になると言えるのではないでしょうか。

また、前回も述べましたが、Scanamindでは、回答者がそれぞれ独自の評価項目を作成しているため、旧来の統計的手法では分析する枠組みがありません。そのため、評価項目が同一でなくとも統合分析が可能な量子数理(*2)を用いています。

*2量子数理…電子や原子核といった微視的スケールでの物理現象を扱う量子力学を記述するための数学体系。

【2】基本的なとらえ方[2]
アウトプットデータの見方として以下の4点を挙げました。調査結果の傾向を読み取りやすくなると思いますので参考にしてください。

調査事例より得られた知見

以下のように約2,000人分のデータを集計して表示されたScanamindのマッピング図によって、当初の目的であった自動車に対する消費者のイメージ構造を可視化できたのではないかと思います。例えば、「トヨタ」「プリウス」という名前は枠の外側にあり、フォントも大きいので特徴が際立っているブランドだということや、「軽自動車」「燃費」が世の中で注目されている言葉だということがわかると思います。

また、マッピング図では消費者の自動車に対するイメージを、「安全・安心」「ラグジュアリー」「ひろびろ」「かっこいい」「かわいい」「コンパクト」「低燃費」「ハイブリッド」といった8つの概念に分類することが可能です。20年前にこうした調査を行った場合は、高級車、大衆車、スポーツカーくらいの概念でしか分類できなかったと思いますが、現在はそれらの概念がさらに多様化し、消費者ニーズも細分化していることがわかると思います。さらに、右部分が「かっこいい」「ラグジュアリー」など感覚的な右脳概念であり、左部分が「低燃費」「コンパクト」など理性的な左脳概念な位置づけとしても把握することが可能です。


■8つの概念に分けたマッピング図

■ 対極にある概念を比較したマッピング図
円の中心から対極にある「コンパクト」「低燃費」と「ラグジュアリー」「ひろびろ」は対立する概念であり、それに対応した車種やメーカー名がマッピングされていることがわかると思います。

■ メーカー別のイメージの比較図
メーカー別で見ると以下のようなイメージが持たれていることがわかります。
・トヨタ=「安全・安心」を象徴する存在。安全性・丈夫
・日産=トヨタと同じ方向にベクトルがあるが、強いイメージはほとんどない。
・スズキ=コンパクト・軽自動車
・ホンダ・ダイハツ=価格・低燃費
・BMW・ベンツ=「ラグジュアリー」の象徴。高級感・ステイタス・乗り心地
・アウディ=かっこいい
・スバル=ラグジュアリー(高級車的なイメージにあったのは意外な結果で、コアなファンが多いと推察される)

アウトプットデータの活用

Scanamindによる調査では、調査対象者が自ら選択肢を作成するため、日本語・英語・中国語・ポルトガル語といったどんな言語でも対応できるだけでなく、複数の国において多言語で調査したものを一度に解析して可視化(マッピング)することが可能です。そのため以下のようなマーケティング用途に活用することができます。

【1】日本、米国、中国、ブラジルなどの複数の国で、新規参入やリニューアルを行う際の市場のアウトラインの把握
【2】自社と他社の製品/サービス/ブランドの比較や市場におけるポジショニングの把握

※Scanamindに関わる技術は株式会社クリエイティブ・ブレインズが特許法に基づく特許権を取得しています(特許第3335602号,特許3278415号,特許3417941号,特許3638943号,特許4824837号)。
米国・ドイツ・フランス・英国でも同社の特許権が成立しています。
※Scanamindは株式会社クリエイティブ・ブレインズの登録商標です(登録番号第5109952号)。また世界主要35カ国における同社の登録商標です(国際登録第1131308号)。
※「Scanamind」公式サイトhttp://www.scanamind.jp/

次回は、旧来調査手法に対するScanamindの優位性(比較対照)や、特に優位性を発揮できる場面について紹介する予定です。


「Scanamind」についての詳細お問い合わせは以下まで。
GMOリサーチ株式会社 JMI事業本部 担当山田
Tel.03-5784-1100
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